【インタビュー】LTEエリア構築はどうなっていくのか……KDDIの基地局対策の現状 | RBB TODAY

【インタビュー】LTEエリア構築はどうなっていくのか……KDDIの基地局対策の現状

ブロードバンド 回線・サービス
KDDI 技術統括本部 エリア品質強化室長 木下雅臣氏
KDDI 技術統括本部 エリア品質強化室長 木下雅臣氏 全 2 枚
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 iPhone 5s/5cが発売され、KDDI(au)は自社が展開する800MHz帯“プラチナバンド”の4G LTEサービスについて、積極的にアピールしている。

 800MHz帯を中心としたエリア品質の向上を進めながら、一方では2.1GHz帯のみに対応するiPhone 5のサービスについては、今後もっと良くなる見込みはあるのだろうか?今回はKDDIが展開するLTE基地局対策の現状について、技術統括本部 エリア品質強化室長 木下雅臣氏、技術統括本部 エリア品質強化室 2G グループリーダー 宮尾良徳氏に話を聞いた。

■KDDIが展開する「au 4G LTEサービス」

――現在KDDIが展開しているau 4G LTE端末向けのサービスを改めて紹介いただきたいと思います

木下氏:当社ではauの4G LTEサービス用に3バンドの周波数を割り当てています。Android端末と、iPhone 5 s/5cが対応する「800MHz帯」は10MHzの帯域幅を割いて、下り最大75Mbpsで全国展開しています。現在、800MHz帯の人口カバー率は97%ですが、年内には99%以上への拡大展開を目標に工事を進めています。

 もう一つは主にiPhone 5が使っている「2.1GHz帯」ですが、人口カバー率は現状72%です。今年度末に80%を目指しています。2.1GHz帯についてはまだ5MHz幅、下り最大37.5Mbpsでサービスを行っているエリアが都内に少し残っていますが、郊外はおおよそ10MHz幅で、800MHz帯とほぼ同じ帯域幅になっています。一部地域では15MHz幅を展開し、さらに20MHz幅による下り150Mbpsエリアも推進していますが、端末側がまだ対応していませんので、これらの地域で計測しても理論値の150Mbpsは出ることがなく、およそ100Mbpsぐらいではないでしょうか。

 また、大きな都市部ではAndroid端末用に「1.5GHz帯」も展開しています。こちらは10MHz幅になります。

■「iPhone 5s/5c」VS「iPhone 5」 どちらがつながりやすい?

――RBB TODAYでは、回線速度計測アプリ「RBB TDOAY SPEED TEST」で各所にて速度調査を実施しています。先日、西東京を中心とした日野、八王子、奥多摩エリアでiPhone 5c、iPhone 5を用いた計測を実施したところ、一部エリアではiPhone 5の方がiPhone 5cよりも速い計測値を出すことがありました。この調査結果について、何か原因として考えられることはありますか。

木下氏:考えられる要因の一つには、アンテナ配置の影響があります。800MHz帯と2.1GHz帯の基地局はすべて同じ場所にあるわけではありません。周波数が高くなるほど自由電波損失も大きくなり、通常は800MHz帯より2.1GHz帯の方がおよそ2倍の損失になります。そのため、一つのエリアで800Hz帯1本に対して、2.1GHz帯はもう1本多くアンテナを立てています。同じ面をカバーするなら、2.1GHz帯の基地局の方が数が多くなりますので、2.1GHz帯の基地局の近くで、ちょうど800MHz帯のアンテナの狭間にあるポイントで計測した場合、iPhone 5の実測値が上回るということも考えられます。

――そういった環境の場合、iPhone 5s/5cも、より速度が出る2.1GHz帯へスイッチしないのでしょうか。たとえば、多摩動物公園での計測では、iPhone 5cは下り14.56Mbpsなのに対してiPhone 5が29.86Mbpsという結果でした。

木下氏:この場合は、iPhone 5cが計測した下り14Mbpsという実行値はそれほど低い速度ではないため、800MHz帯の電波を受信し続けていたのだと思います。これがもっと2~3Mbpsあたりまで実行速度が落ちてくると、2.1GHz帯のトラフィックの空きをみつけてスイッチしますが、実は十分な実行速度が出ている状況では、敢えてスループットを高速化する仕様にはなっていません。14~15Mpbsぐらいであれば、お客様の使い勝手にはそれほど問題はないと判断して、iPhone 5cや5sは800Hz帯を保持します。というのも、今は2.1GHz帯の方はなるべくiPhone 5のユーザーの方々に優先的に使っていただくような設定にしています。逆に、iPhone 5s/5cは800MHz帯を優先的に使っています。

 Androidの場合は2.1GHz帯が混雑している場所では、空いている800MHz帯へトラフィックを分散させるような仕様にしています。ピークスループットを常に求めるのではなく、ユーザー全体の使い勝手が良くなるようにコントロールしています。KDDIでは、お客様が体感できるようなつながりやすさを求めたいと考えています。普段使っている時に通信が切れないであるとか、3Gに落ちてしまわないなど、お客様が肌身でわかるレベルで、LTEの使いやすさを高められるようにサービスの充実化を図っています。
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《山本 敦》

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