【ET2013 Vol.3】有志が開発した倒立振子タイプの電動車イス
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これは、自動車から民生機器、社会インフラまで幅広く設計できる同社の技術力をアピールするために、社内の有志がモデルベース設計によって開発したもの。昨2012年は、市販車を電気自動車に改造した試作機を展示していたが、今回は電動クルマイスに挑戦したという。
電動クルマイスといっても唯のクルマイスではない。姿勢制御のためにジャイロセンサを組込んでおり、セグウェイのような倒立振子タイプに変更できる点が、この電動クルマイスの大きな特徴だ。通常のクルマイスでは段差を乗り越える際に、強く勢いをつけなければならず、介助者に大きな負担がかかっていた。そこで段差部に来たら、モータ制御で補助前輪を上げて倒立した状態にさせ、介助者が軽く押すだけで段差の乗り越えを可能にしているのだ。
本体は一般のクルマイスをベースに改造しているが、電動化のためインホイールモータを車輪内に組込み、PWMインバータ制御によってモータをコントロールしている。走行制御のコントローラにはLEGO社のNXTを採用し、モータ制御にはSTマイクロ製のCPUボードを利用しているとのこと。ポイントは制御方式にあるそうだ。安心・安全を実現するヒューマン・インターフェイスとして独自のアシスト方法を開発した。これを同社では「倒立振子HMI制御」と呼んでおり、現在特許を申請中だという。
通常の制御で倒立振子が倒れないようにするには、振子が傾いたときに素早く応答して基の倒立状態に戻すようにフィードバックが働く。当然ながら段差の乗り越え時には、ジャイロセンサーが傾斜を検出するため、介助者側に大きな反力がかかってしまう。そこで倒立中心から、ある一定の範囲でゲインを下げるように調整することで応答が弱まり、それほど力を掛けずに動かせるように工夫を凝らしている。非力な子供や老人でもラクに操作できるため、こういった電動クルマイスが普及すれば、高齢化社会での対応も容易になるだろう。
また、昨年開発した改造EVも同時に出展していたが、あわせて画像認識アルゴリズムを評価するための映像作成システムも公開していた。こちらは、あらかじめ撮影しておいた晴天・昼の映像を、画像処理を施すことによって変換し、擬似的に霧の状態や夜間の映像として利用できるものだ。アルゴリズムの開発時に役に立つという。
《井上猛雄》
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