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【連載・視点】19歳はリフト代タダ!業界を動かしたビジネスモデル

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リクルートライフスタイルの研究員 加藤史子氏「旅行ビジネスがコモディティ化していくのを感じていた」
リクルートライフスタイルの研究員 加藤史子氏「旅行ビジネスがコモディティ化していくのを感じていた」 全 4 枚
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■リスクはぼんやりしていることが多い

 加藤氏のプロジェクトに長野県の担当者は「いいね」と前向きの姿勢を示した。しかし、索道協会が反対した。索道協会は各地域にあり、スキー場、リフト、ロープウェイの事業社が加盟している協会だが、「我々の利益の源泉をなぜ無料にしなければいけないのか?」「そんなリスクを負えるか」といった反応が起き、大反対の声があがった。この時から、プロジェクトは県の依頼案件ではなく、リクルートの自主企画に変更になった。

 加藤氏が、クライアントがなくなってもプロジェクトを推進したのには理由がある。旅行・観光業界に関わるうちに、日々、旅行というレジャーが不利な状況になっているなと感じていたという。「統計上、1回の宿泊旅行には5万円くらいかかる。しかし、実際に行くまで楽しいかどうかわからないものに5万円を支払う意志決定をしなくてはいけないのが旅行という商品」「たとえばソーシャルゲームは若者を集めて利益を生んでいるが、フリーミアムというビジネスモデルです。それは大量のユーザーを囲い込んで、楽しさが分かった人だけ課金してくれればいいというもので、これを見た時に、旅行はますますかなわなくなるなと思いました」。だから加藤氏は、まず体験させて楽しさがわかったらアップセルしていく、有料化していくというやり方をほかの業界から学ばないと、活性化できないと思った。スキー場のフリーミアムモデルというのは、おそらくいけるだろうと思ったという。

 索道協会以外、つまり宿泊施設、お土産店、その周辺産業では反対する人は、あまりいない。なぜならリスクがないからだ。では、20年間売り上げが落ち続け、施設も人手も維持するのが精いっぱいなのに無料にしてしまったらどうなるのか?と憤慨する相手にどう説得していったのか?加藤氏は「これは、どの問題に対しても言えるなと思うんですけど、リスクってぼんやりしてることが多いんですよ」と話す。たとえば、スキー場に1年間やってくる人は何人ですか?と聞くと答えられる人は多いが、19歳はそのうち何パーセントかについてはわからないところが多い。星野リゾートなどデータがある施設に聞くと、1~3%という数字がでてきた。スキー場のビジネスは、天候やカレンダーによって大きく左右される。たとえば、大抵のスキー場はクリスマス付近の3連休から開業する。ただここで開業できれば結構ラッキーで、初雪が遅いと年末年始に無理やり開けることになる。クリスマスに開業できないと5%も売上にひびくと話すところもある。2月の建国記念日が連休になるかどうかも大きな変動要素だ。この数値に対して加藤氏は「お天気とカレンダーで10%程度の変動要素があるのですね。それに対して、業界が意志をもって未来需要を作れるかも知れない19歳という1%のリスクって、とれないんでしょうか?19歳が親を連れてきたらどうですか?大学1年生と2年生のサークルが誘客できたらどうですか?あとはスキー場に来た人が、いっさい飲み食いもせず、レンタルもしませんか?などいろいろ分析していくと、リスクは限りなく低いと感じてもらえる場合が多いのです」と話す。

 このように説得していき、1年目は89ヵ所が参加。2年目はプリンスホテルなど業界大手も参加し136ヵ所、3年目は志賀高原の19ゲレンデを含め172ヵ所と増えていった。もちろん、現在も、反対するケースや事業構造的に参加できないケースも多い。

 最初に参加を表明したのは、プリンスホテル、東急リゾートなど従来の大手事業者ではなく、ホスピタリティパートナーズ、マックアース、クロスプロジェクトなどスノーリゾート再生を手掛ける新勢力だったという。

 なかには、まだ参加に二の足を踏む施設もあるが、徐々に受け入れるスキー場は増えている。
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《RBB TODAY》

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