痛恨のミスである。中には午前の取材で撮影した画像データやレコーダーが入っている。そもそも写真はプロではないがカメラは商売道具のひとつである。しかし、この日は幸い、次の約束まで時間がある。まずは駅員を探し、捜索をお願いすることにした。
駅員からは、運行中の電車の遺失物捜索には、まず何時の電車か、何両目に置き忘れたかの情報が必要になる。山手線レベルのダイヤになると、正確な時間は把握しづらい。遅延も発生していると、分単位で電車が到着した時間を特定する必要がある。捜索も主だった駅の停車中に確認するので、隣り合わせの2両までしか一度に捜索できない。
時間や何両目かも定かではない状態だが、とりあえず降りた時間と車両の目星をつけて2回ほど捜索をお願いした。捜索は渋谷駅と新宿駅になるそうだ。待つこと10分くらい。渋谷駅からの連絡は、該当品なし。さらに10分後、新宿駅では、別の忘れ物が発見されたが、カメラバックではなかった。
この時点で、下車してから30分以上経っていたが、まだ時間はある。もう1回お願いできるか聞いてたところ、「あと20分もしないで、捜索をかけた電車が1周してこのホームに戻ってきます。目星をつけた車両を自分で探したほうが早いと思います。」というアドバイス。
考えてみると確かにそうだ。次の捜索は田端か上野あたりだという。確認連絡がくるころにはその電車は、さらに次の周回に入っているかもしれない。見つかるまで捜索をお願いするわけにもいかない。見つかったとしても、その駅までとりにいって、いろいろ手続きをしたうえで引き取ることになる。時間ロスは避けられない。