物販、歌詞機能、アーティスト発掘……。Spotifyが日本で勝つための秘策とは?本社キーパーソン単独インタビュー 4ページ目 | RBB TODAY

物販、歌詞機能、アーティスト発掘……。Spotifyが日本で勝つための秘策とは?本社キーパーソン単独インタビュー

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Spotify本社のステファン・ブロム氏、スポティファイジャパンの野本晶氏
Spotify本社のステファン・ブロム氏、スポティファイジャパンの野本晶氏 全 6 枚
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■“音楽会社”としての自負

 これら「Spotifyならでは」の戦略的な取り組みは、確かに国内で先行する音楽配信サービスに対向する切り札になり得るだろう。だが一方で、多少インパクトのある機能を揃えるだけでは、まだ音楽配信サービスの立ち上がり自体がこれからと言われている日本市場で足場を安定させることは難しいだろう。もっと大事なのはSpotifyが日本市場にかける“意気込み”ではないだろうか。ブロム氏の思いを率直に聞いた。

「Spotifyには設立から今まで、ユーザーやアーティスト、より深い音楽文化を理解するために捧げてきた“情熱”があります。音楽ファンの皆様とアーティストをより深く知ることで、さらに素晴らしい体験を提供しながら、音楽が好きな全ての方々をつなぐ架け橋になれると確信しています。他社にもキュレーションサービスを取り込んでいる配信サービスがありますが、おそらくSpotifyのキュレーションサービスはどこにも負けません。時間をかけて練り上げてきたと自負があります。私たちはIT企業ではありません。“音楽の会社”としてのアイデンティティを強く持っています」(ブロム氏)

「私たちが自らの成功を測るうえでの指標としていることの一つに、ユーザーやアーティスト、パートナーをハッピーにすることという目標があります。ユーザーの声を集めていると、1日に2時間以上はSpotifyを使うという方も多くいることがわかってきました。これだけでもある程度の成功を収めることができたと感じていますが、まだまだこれからです。サービスに完璧はありません。終わりなき道のりです。でも、そのプロセスを重視しながら、皆様にとってベストなサービスを妥協せず追求して行くことこそが大事です。無料と有料、二つのサービスモデルを持っていることもSpotifyの独自性だと思いますが、これからも両方のサービスに手を抜かず充実させていきます」(ブロム氏)

 なお日本ではサービス導入当初は“エントリー制”という限定的な形で、オンラインで登録を行ったユーザーに対してサービスを利用するための「招待コード」を配布して、徐々にユーザーを広げていく。このエントリー制というシステムがいつ頃まで続くのだろうか。

「SpotifyにはDiscover Weekという、ユーザーの方の好みを自動学習してプレイリストを紹介する機能があります。学習エンジンの精度を高めて、ある程度安定したと判断できたところ、あるいはその他のサービス全体が軌道に乗ったところで、エントリー制をやめて一般開放することになると思います。もちろん、長くお待たせしないようにしたいと思っています。数週間、長くても数ヶ月ぐらいで開放したいと考えていますので、もう少しだけお待ち下さい」(ブロム氏)

 Spotifyは29日、華々しくローンチイベントを開催し、Spotify ABからはCEOのダニエル・エク氏が駆け付けた。「日本はさまざまな文化が集約された独特なマーケット。その魅力を海外にも発信できるようSpotifyが貢献したいし、日本でのリーダーシップを発揮していきたい」と意気込みを語った。Spotifyが目的として掲げる音楽業界の発展に貢献するビジネスモデルが受け入れられれば、今後は他の音楽配信サービスでは公開されていないアーティストの曲がSpotifyで聴けたり、さまざまなハード機器でSpotifyが使える機会も広がっていくかもしれない。その動向に今後も注目していきたい。
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《山本 敦》

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