KDDI、“次のドキドキ”はスマホではなく「au HOME」……田中社長 | RBB TODAY

KDDI、“次のドキドキ”はスマホではなく「au HOME」……田中社長

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握手を交わすKDDIの田中孝司氏とグーグルのSteve Chen氏
握手を交わすKDDIの田中孝司氏とグーグルのSteve Chen氏 全 12 枚
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 KDDIと沖縄セルラーが開催したau2017年夏スマホの新製品発表会に登壇した田中社長が、2017年に本腰を入れるテーマとして「IoT(Internet of Things)」を掲げた。7月下旬からスタートする新サービス「au HOME」の発表内容とともに、その勝算を占ってみたい。

 そもそもなぜ、「au HOME」が今回スマホの発表会でベールを脱ぐことになったのか。田中氏は壇上で「最近国内ではスマホも多くの方々に行き渡って、端末でドキドキすることが少なくなったと感じていた。今回は新しいスマホのラインナップだけでなく、auとしての新たな取り組みを紹介したかったから」だと説明する。

 au HOMEは今年7月下旬のテイクオフを目指して準備が進められているスマートホームのサービスだ。「au HOMEアプリ」(iOS/Androidの両方に対応)をインストールしたスマホで、家庭内に設置したセンサーやカメラを搭載するネットワークデバイスを操作。遠隔地から家族とコミュニケーションをしたり、留守中にも家の中を見守れるセキュリティサービスを提供する。

 サービスの利用にはauひかりを契約するとユーザーに配布されるルーターと、ルーターをIoTゲートウェイ化する無線通信アダプタが必要。ほかにもスマホにはau HOMEアプリをインストールする。あとは「ドアの開閉センサー」「ネットワークカメラ」「マルチセンサー」など用途別に合わせて商品化される「au HOMEデバイス」を単体で購入すれば環境は一通り揃う。機器の導入が不慣れなユーザーのために訪問設置や電話によるアフターサポートも提供する。au HOMEのサービスは月額490円(税別)で利用できるが、当初対象は「auひかりのユーザーであること」が条件とされる。申込みはauのリアル店舗、またはオンラインの「My au」から受け付ける。

 au HOMEをスタートする目的は「ユーザーひとり一人の生活を豊かにするためのライフデザインをauが描いて提案することの一環」であると田中氏が壇上で語っている。「固定回線とスマートフォンの両方を提供しているauだからこそ、スマートホームのプラットフォームをベーシックなところから構築して提案できる強みがある」と述べる田中氏のコメントは説得力のあるものだし、日本国内では特に“スマート家電”を開発・商品化するエレクトロニクスメーカーが共通のプラットフォームづくりに苦戦しているいまだからこそ、auがスマートホームやIoTへの注力を高らかに宣言することには大きな意味がある。

 田中氏はまた「だからといって利用料金が高くて、気軽に体験してみたいと思えないようでは普及しない」と持論を語っている。だからこそ490円(税別)といういわゆる“ワンコイン”以下の価格設定を実際に打ち出した戦略も大胆だ。ただ、最初は対応するネットワークインフラが「auひかり」に限られてしまうのはなんとも残念であるようにも感じる。発表会後のQ&Aや囲み会見の中でも記者から多くの質問が寄せられた「今後の対応」について、田中氏は「auひかりだけということでは市場も制限されてしまうので、順次拡大するつもり。その都度お知らせするので楽しみにしてほしい」と応答した。

 スマート家電やスマートホームは、「実際にデバイスを使ってできること」自体が魅力的でなければ普及しないだろう。au HOMEに対応するデバイスではどんなことができるのだろうか。7月下旬にはデバイスの“第1弾”として、ドアの開閉状態をセンサーでモニタリングする「開閉センサー 01」のほか、ペットの動いた状態や、室内の温度・照度などモニタリングする「マルチセンサー 02」、そしてスマートホームデバイスの定番とも言える「ネットワークカメラ 01」など5つの製品がラインナップする。デバイスの販売価格は3,000円から、最も高価なもので10,800円。au HOMEの契約はデバイスをいくつ増やしても毎月の基本料金は490円(税別)と変わらないのも特徴だ。

 “第1弾”のラインナップを俯瞰する限り、特に目新しいことができる製品は正直にいって見当たらない。年内には家電の利用電力量をアプリでモニタリングできるようにする「スマートプラグ」や、エアコン・照明器具・テレビなどを赤外線で遠隔操作できるようになる「リモコン」も“第2弾”のラインナップとして商品化を予定しているが、これもすでに他社が単体のデバイスとして商品化して、同じ使い勝手を提供しているものがある。

 今後au HOMEの枠内で画期的なデバイスが登場する可能性も考えられるが、他社の製品やサービスにau HOMEのプラットフォームを接続していくことにむしろ活路があるように思う。その可能性については、田中氏が「当初は自社で検証した専用品をお客様に届けていくが、将来はパートナーとスマートホーム市場を大きくしていきたいと思っている」と答えている。SDK(開発キット)を公開していくことについても「裾野を広げていくためには面白いと考え方」と否定はしなかった。

 通信事業者であるKDDI/auが、まずは家庭内のスマート家電やセンサー機器をシンプルに活用できる土壌を整えるために一肌脱いだことは歓迎すべき出来事だと思う。その上で今後は国内・海外のサービスや製品、新規に誕生するスタートアップにも扉を開き続けることができれば、auが理想に描く「豊かなライフスタイル」が現実のものになる日も近いかもしれない。

 この日行われた発表会には米グーグル本社からプロダクトマネージメント部門のディレクターであるSteve Chen氏も駆けつけ、将来はau HOMEのプラットフォームとGoogle AssistantによるボイスコマンドのUIが連携する可能性についても言及した。「音声による操作ができること」はau HOMEが飛躍するために欠かせないファクターであると田中氏も位置づけている。田中氏は「これまで日本では残念ながら海外ほど音声入力でエレクトロニクス機器を操作するインターフェースが定着しなかった。その理由のひとつは、どこか機械的なコミュニケーションに違和感を感じてしまうからだと思う。Google Assistantはかなり自然な応答ができる音声アシスタントだ。日本でも必ずブレイクすると思っている。合わせてauでも色んなことにスイッチを入れてチャレンジしていきたい」と意気込みを語っていた。発表会会場に設けられたau HOMEのデモンストレーションでは、アプリにGoogle Assistantとの連携機能を組み込んだプロトタイプにより、家電のオン・オフを音声コマンドで操作するイメージなども紹介されていたが、本日時点で田中氏の口から具体的な導入時期に関するコメントが明らかにされることはなかった。

《山本 敦》

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