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なぜ、auが月面探査に挑戦? 通信技術で宇宙開発を支えるワケとは

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auとHAKUTOによる「MOON CHALLENGE」のプロジェクトを発表
auとHAKUTOによる「MOON CHALLENGE」のプロジェクトを発表 全 12 枚
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 そしていうまでもなく、月面探査機を地球からコマンドを送って安定して走行させるためには、高い通信技術が必要だ。通信の電波は月面環境による影響を受けやすい。HAKUTOチームとauのバックアップを受けて、月面での通信技術に関する協力を仰ぐことになった。auが今回のプロジェクトに対してどのように関わっていくのか、具体的な内容については田中氏が説明を行った。

 田中氏は「auは月面で安定して通信を行うための技術を提供し、同時に地球への動画・静止画の送信まわりでも貢献していきたい」と語った。月面での通信が途切れてしまうことは、すなわちミッションの失敗を招いてしまう。いわばプロジェクトの命運を握るライフラインだ。KDDIは月面に着陸した母線(ランダー)から探査機(ローバー)への通信技術をサポートする役割を担っているが、月面環境はあらゆる面で不測の事態が起こりうる場所であると田中氏は強調する。

 「表面が極端に乾燥しているため、砂が1mm以下のパウダー状になっている。探査機がこれを移動時にできるだけ巻き上げないようにしなければならない。砂の導電率が高ければ電波が反射するし、ガラス成分が多く含まれていれば電波が回折してしまう。また岩などの障害物があれば電波が届かなくなる。当然ながら舗装道路もないオフロード状態なので、ちょっとした窪みや斜面で電波の届き方も変わる。あらゆる条件下で電波を安定した状態で送れる技術を探求している。また、昼間は100度近くまで上がり、夜間は-150度まで冷え込む極端な寒暖差があるため、通常の通信用チップセットでは持ちこたえられずに壊れてしまう。極端な想定外の出来事も含めてシュミレーションを重ねて対策を練っている」という田中氏。KDDIの研究所にある無響実験室に試作中の探査機を持ち込みながら、アンテナの取り付け位置についても様々なテストを行っているという。

 月面ではデータの伝送帯域に限りがあり、実効速度は数10kbps~100kbpsが出ていいところだという。つまりは大きな容量を食う高画質な動画・静止画データの高速通信には不向きであるということだが、そこにauが培ってきたデータ圧縮・復元のための技術を提供しながら貢献したいと田中氏は語っている。具体的には送信前の段階ではなく、受信後にデータの欠落に対するエラー訂正やノイズ除去などを行う方法で技術検討を進めているという。田中氏は「困難なチャレンジだが、確実に成功させてHAKUTOチームをバックアップしたい」と意欲をみせる。
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《山本 敦》

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