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【連載・視点】海外需要を捉えて成功した日本の伝統工芸……岩鋳の南部鉄器

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カラフルな急須
カラフルな急須 全 12 枚
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 輸出が伸び出したのは20年前。きっかけは、フランスの客が急須を黒ではなくもっとカラフルなフランス人好みの色で作って欲しいと言われたことだ。その客というのは紅茶メーカーだった。紅茶と一緒に販売したり、もてなしに使う「新しい素材を探していたのではないですかね」と岩清水氏は振り返る。ただし、色をつけるということは単純な作業ではない。季節や温度の違いによって色のノリが違い、少しでも気を抜くと同じ青でも求められている青と異なる色になってしまう。「伝統工芸に、これまでとは違うカラフルな色を加えるということに反発はなかったです。しかし作っている方にしてみれば、一生懸命に作ったのものが、果たしてこんな色で売れるのだろうかという不安は随分あったと聞いてます」。結局、口コミで評判が広がり、今では岩鋳が急須や南部鉄器の代名詞になっているほどだ。価格は海外では倍になっている。にもかかわらずインテリアとしてではなく、生活のなかで実際に使われている。また、海外では1個でなく2~3個所持しているファンもいる。クリスマスシーズンの贈答品としての需要もものすごいという。岩清水氏は「色をつけてくれという依頼を断っていたら、今の私たちはなかったと思いますね」と話した。

 「日本はこれからどんどん少子高齢化の時代になっていきます。(南部鉄器は)いいものだけど重くてねという人も多くなります。でも、海外では反応が違います。鉄なので重いのは当たり前という発想があるようです」。個数で見ると売り上げが多いのは米国、次いで欧州。あとはアジア圏だ。欧米では急須が、アジアでは鉄瓶や鍋が人気だ。

 なお、伝統工芸というと後継者不足が心配されるが、岩鋳に関しては心配なさそうだ。「理由はわからないのですが、若い人たちの動きも活発です。一度はほかの地域でサラリーマンを経験し、Uターンしてくる人もいます」(岩清水氏)とのこと。それだけに、社員教育にも気を配る。「工場の人たちの意識改革も行いました。まずは整理整頓を行い、動きやすく次の工程に流れやすい配置を維持するようにしました。また納期がどれほど大切か?品質の重要性を認識してもらうようにしてます。それらは頭ごなしに言うのではなく、一人ひとり話を聞いてあげて、工場の問題点を出していくようにしています」。なお、製造管理や品質管理については大したことはしていないと話すが、どの工程でどのような問題が出たかなどをデータ化したり、検品のシステム導入も考えている。

 伝統工芸の重みについて聞くと岩清水氏は「やはりそこからはじまっているので、もう失えないですよ」「こんな大事なものはないです」と話す。規模を大きくしていくなどの考えはないし、海外支社を出す予定もないという。「現場の、盛岡の空気を見ながら売っていくのが大切なのかな」と思っているという。
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《RBB TODAY》

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